
本作は、主に1対1のボス戦で展開されるアクションSTG。1930年代のアメリカンアニメーション、いわゆるカートゥーンの手法を再現した映像と、ダイナミックなアクションが人気を博し、2017年の発売当初から大ヒットを記録、2018年には売上本数が300万本を突破したという報道もあった。
それが先日、ゲーム機であるNintendo Switch版が発売され、同時にSteamでも日本語アップデートが施されるなど、日本でも再び人気となりそうな兆しが見える。
私は、昨年にSteam版を購入して未クリアの状態だったが、この日本語版を機会に、最初からプレイ再開した。
そこで、発売から1年以上が経過して今更のことではあるが、初プレイ時に感じたことも含めて、私なりの感想「ファーストインプレッション」を書いてみたいと思う。
「昔と今」の共演
本作における最大の特徴は「再現」だ。
ペンや絵の具で描いたような絵に、画面のにじみ・ほこり・傷など、フィルム映画の雰囲気を再現した映像、バック流れる軽快なジャズの音楽、登場するキャラクター達は、動きと共に体が大きく変形してオーバーアクションを見せるなど、当時を思わせる雰囲気と、アニメーションだからできる表現が随所に見える。
と言っても、線の1本1本に「かすれ」や途切れがない綺麗な絵、画面の縦横費は16:9のHD規格など、当時をそのまま再現したものではなく、「味」だけを残した、新しい今の映像だ。
このような、細かな映像演出や動きは、今のコンピューターだから再現できるのだろうと思う。過去のアニメーションが見せた演出と、今の技術だからできる再現という、相反する「昔と今の共存」が面白い。
私がゲームに初めて触れた時はまだ文字は英語だったが、この動きを見てるだけで楽しいことや、意味もだいたい伝わることもあって、さほど苦ではなかった。
その中で、カーネーションの花をモチーフにしたボス『キャグニー・カーネーション』について、

この名前は、かつての映画スター『ジェームズ・キャグニー』からネーミングされている。このような小ネタは随所にあるようで、知っていればより楽しめそうだ。
ボスの名前はプレイ前に表示されるが、実は日本語版をプレイするまで『キャグニー』という名前が付けられていることに気付かなかったわけで、日本語の恩恵をこんなところで受けることになる。
プレイしても実感する「昔と今」
映像や音楽などの演出は1930年代のアニメーションを再現している、それが最大の特徴だが、肝心のゲーム内容はどうか?その答えの一つは、2017年の記事『Cupheadの生い立ちとインスピレーション、制作手法(Made with Unity)』に書かれていた。引用すると、
ゲームプレイについて言えば、主要なインスピレーションの源泉は『ガンスターヒーローズ』、『魂斗羅スピリッツ』、『魂斗羅 ザ・ハードコア』、『スーパーマリオワールド』、『ストリートファイターIII』、『ロックマン』、『忍者龍剣伝』などです。目指したのは、すぐに満足感が得られること、覚えやすいが極めるのは難しいこと、難しいけどフェアであること、そして瞬間的・直観的なアクションです。本作はアートに力を注いだタイトルですが、プレイヤーには「鑑賞」するのではなく遊び尽くして欲しかったのです。

80〜90年代のタイトルが次々と挙げられているが、その中で『魂斗羅』シリーズや『ガンスターヒーローズ』で見られた、各場面の敵やトラップが見せる様々な演出やギミック、プレイヤーのアクションと武器の選択、撃ち込む位置と方向を常に見極めなければならない戦略、撃つ方向を固定する「ロック」の操作など、アクションSTGとしての根本は、これら過去のゲームから引き継いでいることが分かる。
「難しい」の理由
また、本作は発売当初から「難易度が高い」という話をよく聞いていた。私がゲームに触れる前にそれを聞いて、過去のゲームに見られたような、敵の移動や攻撃のテンポが速いことやタイミングがシビアなど「プレイヤーがついていけない」という意味と想像していた。
でも実際にプレイすると、それとは少し違う。難しい理由は「フェイント」だと思った。

例えば、最初の「ジャガイモ」をモチーフにした敵は、土の玉を連続で投げてくるので、ジャンプでポンポンポンとテンポよく簡単に避けることができる。でも、時には違うテンポで投げてくることもあって、同じ感覚で飛ぶとミスする。

前述した、花がモチーフのボス『キャグニー・カーネーション』は、ブーメランとミサイルを交互に出して攻撃してくるが、「ブーメラン出した後でミサイルを撃つ」のときや「ミサイルとミサイル」「ミサイルの次かブーメラン」と、組み合わせが攻撃のたびに異なる。
だから、敵の攻撃を覚えるだけではなく、どのパターンが来ても対応できる感覚を持たないとクリアが難しい。この予想できない動きが、難易度に関わっていると思った。
プレイする度に何かが変化するので何度でも楽しめるゲームと言えば、いわゆるローグライクを思い浮かべるが、本作はそれと少し異なる形で変化を楽しむ手法があるように思う。
ゲームと映像の共通点
その「予想できない」は難易度だけではない。ゲームのテーマとなっている「カートゥーンアニメーション」がまさにそれだ。
戦闘中、敵の動きが止まったと思えば、突然腕がグインと伸びて殴られる。空を飛ぶ魔女が、突然変形して「巨大な顔の三日月」になるなど、直前とは全く違う形になったり予想がつかない動をして、常に「何でそうなる?」と驚かされる、だから楽しい。そんなアニメーションの魅力がゲーム全編にちりばめられている。
こんな感じで、映像とゲームの両方に「予想できない楽しさ」が込められている、ゲームの根本はそこにあると思った。
映像を楽しむ、予想できない動きを楽しむ、今回の日本語対応のおかげでストーリーを知り、より深く楽しめる。そんな様々な「楽しむ」が、本作に込められているように思う。