2014年12月07日

Never Alone・「知る」ためのゲーム

 この記事も含めて、インディーズゲームについて書いたまとめはこちらLink


 ゲームには、ゲームとしての面白さ、例えば難易度や各ステージの構成、パズル的に考える部分など、言わばゲーム本来の形を重視したものに対して、映像や音楽、その中で見せるドラマなど、ゲーム以外の部分を重視するものも多い。

20141207-01.jpg
Never Alone(日本公式サイト)
Never Alone (Kisima Ingitchuna)(Steam販売ページ)

Unity Games Japan(国内販売元)
架け橋ゲームズ(日本語ローカライズ担当元)

 このゲーム「Never Alone」、位置づけとしてはゲーム以外を重視した作品と言えるが、それは映像や物語などと共に、「伝える」事に重点が置かれている。

20141207-02.jpg
 ゲームを始めるとストーリー、というより、語り手より昔話が語られる。それは、北極圏にある村から始まる。
 その地には、ある時から吹雪が止む事なく続き、村人達が苦しめられる。その村人の一人である少女は、原因を知るために村を出るが、途中で一匹の白いキツネと出会い、一人と一匹で旅を続ける。

20141207-03.jpg
 ゲームとしては、極寒の地を舞台に、雪や氷に囲まれた世界の中、少女とキツネを操作して進んでいくアクションタイプ。
 制作元であるE-Line Mediaはアメリカのニューヨーク、Upper Oneはアラスカ州にあるスタジオで、民話として語り継がれる物語「クヌーサーユカ」をベースに、シナリオなどアラスカの原住民との協力によって制作されている。
 また日本では、架け橋ゲームズによるローカライズで、言葉は全て日本語字幕として出てくる。

ゲームの基本と、味わうもの

20141207-07.jpg
 操作は、ゲームコントローラーの左スティックで左右・ロープやはしごの昇降という移動、Aボタンでジャンプと、基本はこれ。

20141207-05.jpg
 また場面によって、吹雪に飛ばされないようにBボタンで地面にしがみつく、Xで場面に応じたアクション、途中で手に入れる武器「ボーラ」を右スティックで投げる操作もある。

 更に、このゲームで最も重要なのが、操作するのは少女とキツネと2つある事。
 1人プレイならYボタンで切り替えか、2人でそれぞれの操作も可能で、この一人と一匹を使い分けたり、場面によっては進み方や順番を考えないといけない。

 そのため、ジャンルとして「パズルアクションアドベンチャー」と称されているが、パズルのように複雑な解法を探って解くような難しいものではないので、気軽に取り組めると思う。

味わうのは、映像と感覚
 ゲームで魅力の一つと言えるのが、その映像。

20141207-06.jpg
 雪と共に吹雪が吹き荒れる大地や巨大な氷山の一角。キツネは精霊を呼び出すという不思議な力を持っているが、その精霊達が現れてゆっくりと動き出す場面。ゲーム中は、バックに音楽が静かに流れ続けるなど、常に背景やキャラクターを見せる場面がある。

 その映像の中で、吹雪に飛ばされないようにしがみついたり、逆にその風を利用する場面もあるが、強い風が吹く直前に一瞬だけ雪の流れる方向が変わってタイミングをとらえるなど、一つ一つに細かい動作が見えると共に、それがゲームに大きく関わる。
 それらの映像は、美しさを見せると共に、攻略と密接に繋がっている。

 もう一つの魅力は2つのキャラクター、一人と一匹を操作する事と、その感覚。

20141207-04.jpg
 少女は移動、オブジェクトなどを動かせたり武器を投げるのに対して、キツネは高い所に飛んだりよじ登ったり、精霊を呼び出して道を作る。それぞれの特徴を使って助け合わないと進めない。
 これは1人でキャラ切替でもクリアできるが、プレイヤー2人でそれぞれを動かした方が有利で、プレイしていくと、できればそちらでやりたくなる。

 タイトルである「Never Alone」、訳すれば「絶対に孤独ではない」。

 ゲームでは少女とキツネが常に一緒にいる事と、2キャラを動かすスタイルやプレイして味わうもの。その感覚は、タイトルに込められたものと同じではないだろうか。

知る事で味わうもの・文化的背景情報

20141207-08.jpg
 また、ゲームとは別に、大きく関わるものがある。それが、スタートメニューから選べる「文化的背景情報」。
 アラスカの原住民やスタッフによる話を収録したドキュメンタリー映像、1本1分程度のムービー集で、ゲームの各ステージで、至る所に置かれているターゲットを取得すれば一つずつ解除されて見る事ができる。

20141207-09.jpg
 ゲームの中に出てくる少女とキツネ、その行く手を阻むホッキョクグマ、小人、人狩りなどと共に、極寒という最大の敵、また武器や道具など、全て実際に原住民の間で語り継がれたり使われているもので、更に、この世界で生きてきた彼らの考え、伝統など、それぞれについて詳しく語られる。

20141207-10.jpg
 中でも、生きていくために「全てのものは、みんなで分け合う」という意識について語られるムービーでは、2つのキャラを動かして助け合うゲームシステムに関わっているようにも思える。これらの映像は、各場面の合間やゲーム終了時に見る事ができる。

 正直な話、この映像だけでは、本当にTVなどでドキュメンタリーを見る事と何ら変わりはない。だから私も、最初のうちはまるっきり見ずにゲームを進めていた。
 でも進めていくうちに、少女とキツネという一人と一匹の関係、途中に出会う者達、様々な道具など、プレイして触れていくごとに、その映像にも少しずつ興味がわいてくる。そして見る事により、ゲームの深い部分に触れる事ができて、感動すら覚えた。

 ゲームに触れたからこそ知る事ができる。それが、この映像集と言える。

 余談ではあるが、海外の公式サイト

Never Alone(海外公式トップ)
Never Alone - Iñupiaq Perspectives(ムービー集)

 ここには、日本公式には無い、メイキングなどを含めたムービー集があるので、これも含めて、伝える意味を実感出来ると思う。

ゲームに見える優しさと、優しすぎる事

 私も数時間のプレイでクリア。ドキュメンタリー映像も全て解除して見た。
 それによって全実績解除となるが、私なりに感じた事の一つは、「優しさ」。

20141207-12.jpg
 途中で追いかけられるシーンでは、ある程度余裕があるけど、程よく緊張感持たせてくれる。1人でもできるが2人が有利というスタイル。ゲームを楽しませるかと物語を見せるかの両面。
 様々な所で両立させようと、尖らず強制されにくく、中間を狙ってるように思う。そこに遊びやすさと共に、優しさを感じる。

 だが逆に、ゲームとして無理もある。

 キャラクターの動きとして、崖などから落ちそうになったら捕まるなどジェスチャーをする。そんな細かい動作と落ちにくい配慮が、素早いアクションが必要な場面では余計な動きとなってミスになる事が多い。
 言わば、優しさが仇に、優しすぎる事が問題になっている。
 ただし、それを必要とする場面はごく一部など、その欠点も補おうとする意図も見える。

 また、崖から下の方に降りていく場面で、ストーリー上で展開する前に下に落ちたら画面外としてミスになる。極寒の地で水に落ちたら死ぬという厳しさの中で進んでいたら、途中で水中を潜る場面があるなど、物語の展開を重視するあまり、ミスの条件が各場面で微妙に変わるという違和感はあった。

 狙っているのは両立だと思うが、結果的には、ゲームよりストーリー重視になっている。

知る事を求められるか

20141207-11.jpg
 ゲームのベースとなっているのは、民話より作られた寓話(教訓または諷刺を含めた例え話)で、ゲームとして楽しむと共に、何かを教え、伝える。
 それがこのゲームの目的で、コントローラーを握ってキャラクターを動かしている時も、物語を最後まで見ても、ドキュメンタリー映像を見ても伝わってきた。
 だが、ゲームとしての難易度としては低く、プレイ時間も短く数時間でクリアできる。しかも操作に若干の難がある。

 現在、Steamでは定価で1480円、映画をDVDやBDで購入するような価格で入手できる。その価格でゲームを楽しみたいか、映画のように映像やストーリーなどを楽しみたいか。
 プレイヤーの目的が前者のみなら不満が出ると思う。私もどちらかと言えば、物語も味わいつつゲームを楽しみたいという感覚で始めたが、最終的には、今までとまた違った感覚で、ゲームで「知ると味わう」事ができた、素晴らしい作品だったと思う。

 このゲームに何を求めるか、何を受け入れられるか。それが、楽しめるかどうかに繋がると思う。


(2015/02/15 追記)
 Unity Games Japan様のNever Alone日本語公式サイトにて、この記事を紹介していただきました。




posted by 司隆 at 10:04 | Comment(0) | Game
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。